Wind Noise Can Contribute to Noise-Induced Hearing Loss in Cyclist
米国立衛生研究所(National Institutes of Health, NIH) を母体とするNIDCDという国立の研究機関が公開している子どもとその保護者向けの教育用ウェブサイト「ノイジー・プラネット」に掲載された記事を日本語訳して紹介します。
原文を読まれたい方は、以下のリンクを参照して下さい。
https://www.noisyplanet.nidcd.nih.gov/have-you-heard/wind-noise-can-contribute-to-noise-Induced-hearing-loss-in-cyclists
ノイジー・プラネット 「知ってる?」[*1]
風切り音がサイクリストの騒音性難聴の一因となる
サイクリングは、アウトドアを楽しむ優れた方法です。カロリーを燃焼したり、健康維持をしながら良い景色を見たり、自然の音を聞いたりできるのです。しかし、サイクリストにとって、風切り音が悪影響となることをご存知でしたか? サイクリストが経験する風切り音は、騒音性難聴の原因となるのに十分に大きいことをヘンリーフォード病院の耳鼻科チーム[*2]が発見しました。この風切り音は、15mph(24km/h)(平坦な道での平均的なサイクリストの速度)で85dB[*3]から、60mph(96km/h)(おおよそプロのレース中のダウンヒルでの速度)で120dBまで、速度に応じて変化します[*4]。
ヘンリーフォード病院の耳鼻科医、Anna Wertz氏と共著者は「85dB以上の騒音は、騒音性難聴の原因となりうるため、これらの発見は重要」と話しています。「短い時間騒音にさらされることは、聴覚への継続的な影響とはなりにくいが、継続したり繰り返す騒音にさらされることは永久的なダメージとなり得る」のです。
風切り音の影響に関する研究には、15-60mphの風速を発生させられるフォードモーター社の音響風洞が用いられました。サイクリストは耳にマイクロホンを装着し、風向に対し15度ずつ角度を増しながら、様々な速度において騒音レベルを測定しました。興味深いことに、研究者らは、下流側に観測される渦で発生する乱流により、下流側の耳の方が騒音が大きいことを発見しました。詳細はオンラインで研究成果[*5]が閲覧できます。
どのくらいの大きさの騒音が大きすぎるレベルなのでしょうか? 国立難聴とその他コミュニケーション障害研究所[*6]によれば、85dB以下の騒音であれば、長時間の暴露でも難聴になりにくいとしています。しかし、85dB以上の騒音の場合、長時間であったり、繰り返されたりすると難聴の原因となる可能性があります[*7]。より大きい騒音は、より短い時間でも騒音性難聴を発生させるのです。より詳しくは、ノイジープラネット(Noisy Planet)ウェブサイトの「聞こえの守り方」[*8]を参照してください。
原文最終更新日2017/02/28
訳者注
[*1] “It’s a Noisy Planet. Protect Their Hearing.”サイト中の”Have you heard? “
ノイジー・プラネットは、米国立難聴とコミュニケーション障害研究所(National Institute on Deafness and Other Communication Disorders, NIDCD)が公開している子どもとその保護者向けの教育用ウェブサイトです。
NIDCDは、合衆国保健福祉省公衆衛生局(U.S. Department of Health & Human Services)の下にある米国立衛生研究所(National Institutes of Health, NIH)を母体としています。
[*2] Henry Ford Hospital Department of Otolaryngology – Head and Neck Surgery
[*3] dB デシベル 音の大きさの単位。
[*4]この記事(及び、この記事が参照しているレター)では、15mphで85dBとなっていますが、その後の同チームの論文で、10mph(16km/h)でも85dBの騒音レベルとなることが報告されています。
[*5]Wind-Related Noise Experienced by Cyclists Can Contribute to Noise-Induced Hearing Loss
https://www.henryford.com/news/2016/09/wind-related-noise-experienced-by-cyclists-can-contribute-to-noise-induced-hearing-loss
[*6]National Institute on Deafness and Other Communication Disorders, NIDCD 通例使われる日本語訳が見つからなかったため、訳者が訳したもの。適切な訳があれば連絡をお願いします。
[*7] 日本においても、騒音障害防止に関する省令(労働安全衛生規則)やガイドライン(騒音障害防止のためのガイドライン策定について 基発第546号 平成4年10月1日)があります。ガイドラインによれば、85dBA以上となる作業環境は、「作業環境を改善するため必要な措置を講じ」たり、「必要に応じ、防音保護具を使用させる」ように記述されています。 なお、dBAは等価騒音レベルであり、dB(dBSPL)とは若干評価尺度が異なります。
[*8]How to protect your hearing
https://www.noisyplanet.nidcd.nih.gov/kids-preteens/how-do-you-protect-your-hearing